診療(診察・治療)2026年03月24日
#134) 動脈硬化は歳のせいだから手の打ちようが無い、と考えられている。嘘ばっかり‼

 動脈硬化を数値化する検査にCAVI/ABIテストがある。CAVI値の経年変化をグラフ化すると、20歳過ぎから年齢とともに右肩上がりに硬化が進んでいく。動脈硬化は言わば加齢変化なので、「進んで行って当たり前、治す薬や食品は無い」というのが大方の考え方だろう。

 

 しかし、そんなことはない。治せる、あるいは、少なくとも進行を食い止める薬はあるのです。私は開業して10年半、動脈硬化の進行を食い止める努力を続け、成功してきた。うちの患者さんから脳梗塞や心筋梗塞の事例は一つも出していない。ただ一例、自身の心筋梗塞を4年前に経験した。洒落にもならんけど、、、。

 

 ここ1年ほどの間に、私の認識と世間一般の医者の認識に大きな乖離があることに気付かされた。それは大学病院や総合病院でも同じなのだ。言わば「動脈硬化は放っとかな しゃあない」という諦観が世間一般の常識なのだ。

 

 中には「コレステロールを下げれば動脈硬化を治療できる」とばかりに強力スタチンの処方を続ける医者も居る、しかし、私が経験した実例から言えば、既に数年以上にわたって、いわゆる悪玉 LDLコレステロール値を70くらいに保っている患者さんが強烈なCAVI値(10 ~13以上)を示す事例を繰り返し経験してきた。つまり、コレステロールなんか何ぼ下げても一切無効なのですよ。だから、大抵の医者は動脈硬化を歯牙にもかけない。治療可能であることを患者も知らない。マスゴミも然り。

 

 ともかく、当院では動脈硬化の進行防止に成功してきた。用いる薬はトランドラプリル、テルミサルタン、アゼルニジピンの3種。この3剤は慢性腎臓病(CKD)の進行悪化を食い止めるためにも有効。

 トランドラプリルは断トツに優秀なACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤。テルミサルタンはARB(アンジオテンシンII受容体ブロッカー)の一つで、AGE-RAGE系を介した糖毒性を抑制する効果も持つ。アゼルニジピンはCCB(カルシウム拮抗薬)の中で唯一の腎糸球体高血圧に効く薬。5万とあるCCBの中で唯一、腎機能保護効果のある薬。

 ひとつ自慢をさせてもらう。トランドラプリルの国内承認は難産だったが、私共の論文が、国による承認を得るに際して決定的な切り札になった。

 

 トランドラプリルは血管壁のアンジオテンシンII (以下AII と略)産生を抑えることで、テルミサルタンは血管壁のAII受容体をブロックすることで、血管壁の炎症・肥厚を加速するAIIの作用を抑える。つまり、動脈硬化を抑えるためにはAIIの増殖因子的な作用を抑えてやればよい。皆さん、なんでこのことに気付かないのだろう? 未だに「AIIは昇圧因子」とだけ思い込んでいる、アタマの固い人が世の中の大半らしい。

 

 私は?と言えば、1985年1月20日(わが36歳の誕生日)カリフォルニア州オクスナードで開催されたゴードン・リサーチ・カンファレンスで聴いた「AIIの増殖因子・成長因子としての機能」にすっかりハマってしまった。この研究会には錚々たる話し手が雁首を並べていた。のちに細胞内シグナル伝達のテーマで1994年のノーベル生理学・医学賞を受賞したマーチン・ロドベルらのホットな話を固唾を吞んで聞き入った。 あれから41年が過ぎた。わが研究者人生の画期だったと思う、今にして。

 

大昔は、「動脈硬化のコレステロール仮説」なるものがあって、コレステロールを抑えれば動脈硬化は防げる、と考えられていた。 しかし、コレステロールの産生を強力に阻害するスタチンを以てしても世界中の動脈硬化をビタ一文抑えることは出来ていない。この実状に鑑み、「コレステロール仮説は誤りである」とするのが現在の真理なのだ。

 

 現在の正しい理解の仕方は以下の如し。動脈硬化は血管壁組織に於ける慢性炎症であり、その炎症過程の中でAIIなどの「増殖因子的な機能」が血管組織の変性・病理に寄与している。従って、ACE阻害剤やARBを用いることによって動脈硬化病変の抑制・改善が得られる、と期待するのは当然のことだとお判りいただけるでしょう?

 

 動脈硬化が進むに連れて心臓も腎臓も消化管などの内臓も、機能低下を来たすのは当然でしょう。局所の血液循環が「落ちる」からです。各臓器の「血の巡りが悪くなる」からです。確かに動脈硬化は加齢変化ではありますが、臓器循環が低下して各臓器の機能低下を招くとすれば、これは単なる加齢現象ではなく治療対象になります。その治療手段がトランドラプリルやテルミサルタンなのですよ。